拉致問題・安倍の大ウソ2
安倍首相はウソつきだ──。本サイトでは安倍首相の数々のウソについて繰り返し報じてきたが、意外な人物が安倍首相のウソつきぶりを暴露した。
意外な人物とは、北朝鮮拉致被害者・蓮池薫氏の兄で、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)元副代表の蓮池透氏だ。拉致問題といえば、安倍首相が官房副長官だった小泉政権時代に、一気にその知名度と人気を高めたきっかけ。拉致被害者とその家族との関係は深く信頼も厚い。そんなイメージがあったが、その当事者のひとりからもウソつきと批判されるとはいったいどういうことなのか。
蓮池氏の「安倍首相ウソつき」発言が飛び出したのは、12月9日に開かれた辻元清美衆院議員の政治活動20周年パーティでのこと。会の冒頭、辻元氏と田原総一朗氏の対談が行われていたのだが、途中で客席にいた鳥越俊太郎氏と蓮池氏を見つけた辻元氏が、ふたりをステージ上に招き、急遽4人でのトークとなった。
TBS『NEWS23』岸井成格氏の後釜とも噂される朝日新聞特別編集委員の星浩氏も客席にいる前で、鳥越氏が『NEWS23』の岸井降板問題を批判するなど、当然、話題の中心は安保法制、安倍政権批判で盛り上がった。
そんななか、マイクをもっていなかった蓮池氏が、何やらボソっとつぶやいた。隣に座っていた辻元氏がそれを受けて、聴衆にその内容をこうバラした。
「蓮池さんがヨコで、安倍さんはウソつきって言ってる(笑)」
マイクを渡された蓮池氏、さすがに表立っては発言を認めないだろうと思いきや、もっと強い調子でこう断言したのだ。
「安倍さんは、拉致問題を利用して、総理大臣になった」
蓮池氏は、安倍晋三が拉致問題をいかに自身のイメージ操作に利用してきたか、そのウソの数々を暴露し始めた。
「彼はどういうふうに喧伝していたかというと、小泉訪朝に官房副長官として一緒に行って、北朝鮮側、金正日総書記から拉致問題について謝罪と経緯の報告がなければ、日朝平壌宣言にサインをせず、席を立って帰るべきだと自分が進言したと。そういうことになっているが、ウソ。それは、みんなの共通認識だったんだから」
蓮池氏言うように、この安倍の「署名見送り進言」は、当時数々のメディアが報じていた。
〈小泉首相と金総書記との間で交わされた「日朝平壌宣言」をめぐり、拉致被害者の多くが死亡していたことが分かったため、安倍官房副長官と高野紀元外務審議官が一時、「宣言の署名を見送るべきだ」と主張していたことが複数の政府関係者の話で明らかになった〉(産經新聞2002年9月18日付朝刊、一部略)
〈昼食を一緒に食べようという北朝鮮側の提案を断り、日本側は控室で日本から持参した幕の内弁当を食べた。だが、首相はほとんど手を付けなかった。 安倍が首相に迫った。「拉致問題について金総書記の口から謝罪と経緯の話がない限り共同宣言調印は考えた方がいい」 決裂もありうる──。緊迫した空気が周囲を包んだ〉(毎日新聞同19日付朝刊、一部略)
しかし蓮池氏も指摘するとおり実際はこの武勇伝はまったくのデマだ。本サイトでも報じたが、日朝首脳会談の立役者で会談に同行していた田中均アジア大洋州局長(当時)が後にフリージャーナリストの取材に対し、安倍の署名見送り進言があったことをはっきりと否定している。そもそも金総書記が拉致を認めて謝罪しなければ平壌宣言に署名できないのは会談関係者全員の基本認識だったから、わざわざそんなことを言う必要もなかった、と蓮池氏と同様の解説を田中氏もしていたという。ちなみに補足すると、このデマ武勇伝をメディアにリークしたのは、ほかでもない安倍晋三本人なのだ。
さらに蓮池氏によると、安倍首相の拉致問題をめぐるウソは、これだけにとどまらなかった。蓮池氏は語気を強める。
「弟たちが北朝鮮から一時帰国ということで帰ってきたとき、当初2週間で帰ることになっていた。そのときに帰国した被害者5人を安倍さんは体を張って必死に止めたっていうんだけど、これは真っ赤なウソ! 止めたのは、私なんだから! 安倍さんが止めたって言うのであれば、途中で電話をしてくるとかあるはずだけど、そんなのない。あれは、安倍さんが止めたんじゃない、私が止めたんだ!」
この「北朝鮮への帰国を体を張って止めた」という話も、先ほどの「署名見送り進言」デマと同じくらい流布している。安倍首相自身、たとえばFacebookで“帰さないという自分の判断は正しかった”と書き込むなど、あたかも自分の手柄のように語っている。蓮池氏によると、これも真っ赤なウソなのだ。
安倍が、こうしたウソをついたのは世間に対するイメージ操作だけではない。政権内部でも、同様のウソをついていたようなのだ。
「それから朝日新聞で今年9月に福田康夫さんのインタビューが載って、「5人を帰すかどうか、苦悩した」と。その記事のなかに、安倍さんが「5人の意見を集約しました」と福田さんに言ってきたとあったんですが、そんなことしてません!」
拉致問題についてはなんでもかんでも自分の手柄にしようという安倍の姑息さが透けて見える。
「そういう美談がはびこっているわけですよ、世の中に。安倍さんはすごく拉致被害者に寄り添っている、みたいなイメージ。その美談を利用して総理大臣になったんですよ」
安倍のこうした拉致武勇伝デマの数々は、「拉致被害者に寄り添っているイメージ」をつくっただけではない。「席を蹴って帰りましょうと進言した」「体を張って説得した」とやたら勇ましい言葉をチョイスし、安倍の「闘う保守政治家」というイメージ形成にも大きく寄与している。さらにいえば、現在につながる排外ナショナリズムの機運をも一気に高めた。蓮池氏が指摘する通り、安倍は拉致問題を利用して、自身の“闘う政治家”イメージをつくりあげ排外ナショナリズムを煽り、それらを武器に総理大臣にまでなったのだ。
そして、蓮池氏は安倍首相について、こうも指摘した。
「安倍さんはかけ声だけ。自分の在任中に解決するって言ってますけど、では何をもって「解決」とするのか。安倍さん自身、わかってない」
安倍首相はかけ声だけ。これは拉致問題に限らず、まさに安倍首相の政治姿勢すべてに当てはまる。アベノミクス、積極的平和主義、一億総活躍……すべてかけ声だけで、中身もなければ、その先に解決もない。安倍政権の支持者たちはそのことを早く自覚すべきだろう。 (編集部)「リテラ2016転載」