拉致問題・安倍の大ウソ
北朝鮮拉致被害者の家族の蓮池透氏が新刊「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」の刊行にあわせて12月21日、日本外国特派員協会において記者会見を行った。 会見冒頭で安倍晋三・首相について、 「安倍さんは拉致問題で日本におきましては絶対的な信頼を得て、私に言わせれば政治利用をして総理大臣にまでなった、拉致問題を踏み台にして総理大臣になった」 と発言した蓮池氏の著作を読むと、具体的な話が出てくる。
蓮池薫さんたちが2002年に帰国したとき、あくまで一時帰国という扱いで、一週間ばかりしたら北朝鮮にまた戻るという話になっていた。それを「永住」へと決断したのが安倍晋三氏だという美談に仕立て上げられているが、これが真っ赤な嘘だという。安倍氏は北に戻るという薫さんたちを止めようとしなかった。説得したのは透さんだった。「永住」を決断した理由を 「北朝鮮に戻ったら、二度と日本の地を踏むことはないだろう。」「また日本に残った場合は北朝鮮当局も人の子、子どもたちを日本で待つ親元へ送るわずかな可能性がある。その可能性に賭けよう」 と思ったからだと記す。 蓮池氏の著作では「忘れえぬ安倍晋三の言葉」についても触れている。帰国した拉致被害者は一人あたりわずか月13万円のみが支給されることになった。まるで生活保護レベル。透さんが安倍氏に「国の不作為を問い国家賠償請求を起こしますよ」 と追及したところ、薄ら笑いを浮かべながら、こう応えたという。 「蓮池さん、国の不作為を立証するのは大変だよ」 いったいどちらの味方なのか…と蓮池さんは呆れたという。 蓮池さんは自著の最後でこう提言する。 「いかなる民族が相手であろうと、対話と交渉なくして和解はない」
「日朝間に横たわる『過去の清算』の問題を考慮せずして、真の拉致問題の解決はない」
(以下は「リテラ」の2016/4月合からの引用です)
「私が申し上げていることが真実であることはバッジをかけて申し挙げます。私の言っていることが違っていたら、私は辞めますよ。国会議員を辞めますよ」
今年1月12日の衆院予算委員会で、日本の内閣総理大臣である安倍晋三氏がこう断言したのをご記憶だろうか。
これは「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)元副代表の蓮池透氏の著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)への反論だった。
蓮池氏は同書で、安倍首相が実際は拉致被害者たちを北朝鮮に帰そうとしていたにもかかわらず、自分が止めたかのような嘘をついたと書いていた。この記述を、民主党(当時)の緒方林太郎議員が国会質問で持ち出すと、安倍首相はいつものごとく逆ギレして、「拉致問題を利用したことも、ウソをついたこともない」としたうえ、冒頭のような大見得を切ったのだ。
しかし、やはり安倍首相はウソつきだった。その証拠がなんと“身内”からも飛び出してしまった。
その“身内”とは、自民党所属の札幌市議・勝木勇人氏。そう、3月29日の札幌市議会本会議で安保関連法廃止を訴えた共産党の小形香織市議に対して、「精神鑑定を受けた方がいいんじゃないのか」という下劣で差別的なヤジをとばしたことが問題になっている議員だ。
このヤジは全国的な批判を浴び、ワイドショーでも取り上げられる事態とななった。4月4日に勝木市議は謝罪するに至ったが、自民党は勝木市議の処分も検討していると伝えられる。そんな品位の欠片もない勝木市議だが、実は今から13年ほど前の2003年1月30日、自身のブログに「安倍晋三官房副長官の話」という見出しでこんなことを書き込んでいた。
〈(安倍晋三氏は)地村さんたちには、最初、「とにかく一度北朝鮮に戻って、子供を連れて帰国するべきだ」という話をしたそうです。しかし、地村さんたちは、この申し入れを断固拒否したそうです。「一度、戻ったら、二度と帰国はできない」ということだったそうです。「私(安倍)他、政府の人間がたくさん同行すれば、変なことにはならないでしょう」と言うと、「みんなで一緒に行っても、突然銃をもった者が部屋に入って来て、我々を引き離そうとしたら、どうしますか? 安倍さんたちは、その場で何ができますか? 自衛隊も一緒に行ってくれるなら話は別ですが、」と言われ、結局、彼らの言うとおりにしたそうです。〉
これは同年の1月14日に札幌で行われた「安倍晋三先生を囲む会」に出席した勝木市議が、この席で安倍氏自身が発言した内容として紹介しているものだ。つまり、当時、安倍氏は地村保志氏ら拉致被害者に対して「とにかく一度北朝鮮に戻れ」と言ったことを自ら認めて吹聴していたことになる。そして地村さんら拉致被害者がそれを拒否、結果日本に残ることになったことも。
この勝木市議のブログの内容と、蓮池透氏が著書で書いた“事実”は見事に一致している。
あらためて繰り返しておくが、蓮池氏は著書のなかで、「安倍氏が北朝鮮に戻るという拉致被害者たちを説得し、身体を張ってそれを止めた」というのは大ウソだと指摘し、安倍氏をこう批判している。
「あえて強調したい。安倍、中山(恭子・拉致被害者家族担当内閣官房参与【当時】)両氏は、弟たちを一度たりとも止めようとしなかった。止めたのは私なのだ」 「世間では北朝鮮に対して当初から強硬な姿勢をとり続けてきたと思われている安倍首相は、実は平壌で日本人奪還を主張したわけではない。(中略)安倍首相は拉致被害者の帰国後、むしろ一貫して、彼らを北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた。弟を筆頭に拉致被害者たちが北朝鮮に戻ることを拒むようになったのを見て、まさにその流れに乗ったのだ。そうして自分の政治的パワーを増大させようとしたとしか思えない」
冒頭の安倍氏の「国会議員を辞めますよ」との発言の後も、蓮池氏は本サイトのインタビューで、同様の事実を指摘している
「安倍さんには、あなたがいつ説得などしたのか? と訊きたくなりましたよ。本にも書きましたが、弟を説得したのは私であって、安倍さんじゃない。実際に電話のひとつもなかったんですから。当時、政府は5人のスケジュールをびっちりと埋めて作っていましたし、『一時帰国』を変更不可能なものとして進めていたのです。家族たちの間では『帰りのチャーター便はどうするのか?』と、北朝鮮に戻すことを前提に具体的な話し合いまでもたれていたのです。 また、政府はこうも言っていました。『今回は一時帰国だけど、次回は子どもも含めて全員が帰ってきますよ』と。安倍さんも一貫して、5人を北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた」
蓮池氏はまた、これまで著書に書いたり、講演などで語ってきたことはすべて自身の体験であり、それを否定した安倍首相こそ大ウソつきだと批判したが、そのことが勝木市議のブログによっても証明された形だ。
しかも、勝木市議は姑息なことに、自分のヤジ騒動をきっかけにブログのこの記述がクローズアップされた4月になって削除している。おそらく、これは自民党か官邸が命じて削除させたのではないだろうか。
しかし、後になってごまかそうとしてももう遅い。安倍首相はあれだけハッキリと国民の前で「ウソなら議員を辞める」と明言したのだ。総理大臣が国権の最高機関である国会で発した言葉は重い。安倍首相は国民との約束を守って即座に議員辞職をすべきである。 (伊勢崎馨)