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オリバーストーン広島で語る


「プラトーン」のオリバーストーン監督です。

いづれ。「絶薬」に登場して貰う予定ですが、四年前ヒロシマ訪問後語ったインタビューを目にしたので

て゛転載します

現在来日中のオリバー・ストーン監督が、2013年8月6日に原水爆禁止世界大会の広島会場でスピーチを行った。オリバー・ストーン監督は、歴史学者のピーター・カズニック氏とともにドキュメンタリー・シリーズ「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」を制作。1930年代から第二次大戦、広島と長崎の原爆投下、そしてブッシュ、オバマ大統領までのアメリカ史を描いたこの作品は、NHKのBS世界のドキュメンタリーにて2013年4月から6月にかけて放映され、この8月再放映されている。

私は安倍氏の言葉を信じていない

今日ここにこられてうれしい。初めて広島に来たが、この2、3日、特に皆さんも出席されたと思うが今朝の平和記念公園での式典を見て強く心動かされた。よくできた式典だった。日本人の良心を証明するような式だった。このすばらしい記念式典は「日本人」の性質をよく表していたと思う。

しかし、今日そこには多くの「偽善」もあった。「平和」そして「核廃絶」のような言葉が安倍首相のような人の口から出た。でも私は安倍氏の言葉を信じていない。そして、この場にいる、歴史をよく知る人々は、安倍氏を信じないという私の言葉に同意してくれると思う。私は今67歳だが、歴史学者のピーター・カズニックと共にこの70年に渡るアメリカ帝国のストーリーを書き直した。

 第二次大戦で敗戦した2つの主要国家はドイツと日本だった。両者を並べて比べてみよう。ドイツは国家がしてしまった事を反省し、検証し、罪悪感を感じ、謝罪し、そしてより重要な事に、その後のヨーロッパで平和のための道徳的なリーダーシップをとった。

そのドイツは、60年代から70年代を通してヨーロッパで本当に大きな道徳的な力となった。平和のためのロビー活動を行ない、常に反核であり、アメリカが望むようなレベルに自国の軍事力を引き上げることを拒否し続けてきた。2003年、アメリカがイラク戦争を始めようというとき、ドイツのシュローダー首相は、フランス、ロシアとともにアメリカのブッシュ大統領に“No”を突きつけた。

一方、第二次大戦以来私が見た日本は、偉大な文化、映画文化、そして音楽、食文化の日本だった。しかし、私が日本について見る事の出来なかったものがひとつある。それは、ただのひとりの政治家も、ひとりの首相も、高邁な道徳や平和のために立ち上がった人がいなかったことだ。いや、ひとりいた。それは最近オバマ大統領の沖縄政策に反対してオバマに辞めさせられた人だ。

 みなさんに聞きたいのは、どうして、ともにひどい経験をしたドイツが今でも平和維持に大きな力を発揮しているのに、日本は、アメリカの衛星国家としてカモにされているのかということだ。あなた方には強い経済もあり、良質な労働力もある。なのに、なぜ立ち上がろうとしない?

 私が1968年に兵士としてベトナムを離れたとき、これで世界は変わると思った。新しい時代が始まると思った。これで米国のアジアに対する執着は終わりになると思った。しかし、アフガニスタン、イラクでの壊滅的な戦い、それにクウェートを加えた中東での冒険のあと、米国はオバマの陰部とともにアジアに戻ってきた。北朝鮮は関係ない。北朝鮮はただのナンセンスなカモフラージュだ。本当の目的は中国だ。第二次大戦後にソ連を封じ込めたように、中国に対する封じ込めこそが目的なのだ。

 第二次大戦後、米国はソ連を巨大なモンスターにしたてあげた。中国はいまその途上にある。つまり米国の「唯一の超大国」の立場を脅かすもうひとつの超大国にしたてあげられようとしている。今は大変危険な状況だ。

 オバマはヘビのような人間だ。ソフトに語りかけはする。しかし無慈悲な人間だ。台湾に120億ドルもの武器を売り、日本にステルス戦闘機を売る。日本は世界第4位の軍事大国になっている。それを「自衛隊」と呼ぶのはかまわないが世界4位の軍事大国であることに変わりはない。

日本より軍事費が多いのは米国、英国、中国だけだ。日本をそういうふうにした共犯者はアメリカに他ならない。日本は米国の武器の最大の得意客なだけでなく、アメリカの行なったクウェートやイラクでの戦争の戦費の支払いをしてくれた。

今年、戦争がアジアに戻ってきた

 よく聞いてほしい、アメリカは、こんなことを言いたくはないが、いじめっ子なのだ。日本が今直面している恐ろしい龍は中国ではなく、アメリカだ。4日前、私は韓国の済州島にいた。韓国は上海から400kmのその場所に最大の海軍基地を作っている。韓国は済州島の世界自然遺産の珊瑚礁を破壊して巨大な海軍基地を作っている。そこは、中国に対しては沖縄よりも前線に位置する。その意味では沖縄よりも危険な場所だ。その軍港には世界最大であらゆる核兵器を搭載する空母ジョージ・ワシントンが停泊できる。そこから出て行って中国のシーレーンを制圧しようというのだ。

韓国と日本が牙を磨き、フィリピンも米軍にスービック湾の基地を戻し、南のシンガポールと新しく同盟を結んだオーストラリアにも海兵隊が駐留する。それに台湾と、もと敵国のベトナムまでもが加わって、中国に対抗する。それにミャンマー、タイ、カンボジア、さらにインドもこれに加わろうとしている。これは大変危険なことだ。NATOが防衛同盟としてスタートしながら、攻撃のための同盟に変化したようなことと全く同じ事がここで起ろうとしている。

今年、戦争がアジアに戻ってきた。オバマと安倍は相思相愛だ。安倍はオバマが何を欲しがっているか知っている。なかでも尖閣諸島について、私にはコメントしようがない。あんなものを巡って戦う気が知れないが、それなのに戦う価値があるように言われている。

 問題は、日本のナショナリズムの精神が、安倍やその一派の第二次大戦に関する考え方、特に中国での南京虐殺や韓国の従軍慰安婦問題などから発する馬鹿げた言説とともに復活しつつあることだ。

 いま皆さんは核兵器廃絶が大切だとお思いだろう。しかし、このポーカーゲーム(危険な賭け事)はアメリカ主導で軍が展開して急速に進んでいる。アメリカは世界の73%の武器を製造しては売りさばいている。ロシアと中国を除いて世界のほとんどの爆弾を作っている。無人攻撃機、サイバー兵器、宇宙戦争用の武器も含まれる。

 核兵器などは、アメリカが戦争に使う兵器のごく一部でしかない。米国は世界の歴史上最強最大の軍事国家なのだ。どう思いますか、みなさん。これに対して怒りを感じてほしい。私が怒っているのと同じように、皆さんにも怒ってほしいのです。

われわれは、この本と映画に5年の歳月をかけて、みんなに、とくに若い世代に、この危険と、米国の傲慢について分かってもらおうとしてきた。米国は「唯一の超大国」であろうとするためにますます暴君ぶりをエスカレートさせ、世界中にアメをなめさせ、無実の人を刑務所に入れ、消し、ファイルを秘匿し、盗聴し、永遠の監視国家たろうとしている。ご存知かどうか知らないがジョージ・オーウェルが(『1984』で)このことをうまく言いあらわした。

これが今世界に起っている事だ。日本は、悪事に加担している。もう一度言おう。ベトナム戦争の後、みなさんは戦争の危なさを知って、これがアジアで最後の大きな戦争になると思ったはずだ。でも、もう一度戦争がある。

ここでみなさんには、ドイツがヨーロッパでしたように、立ち上がって反対の声を上げてほしい。日本はかつて戦争に負け、広島、長崎その他でひどい目にあった。その悲しみを糧にして強くなり、繰り返し戦争を起こして日本と世界に痛みを与えてきたバカ者どもと戦ってほしいのです。

どうもありがとうございました。

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